はじめに
「自作キーボード初心者」とはどのような人々が当たるのか、個人的に思うことをつらつらと書いていきます。
なぜ自作キーボードを選ぶのか
自作キーボードとは、「自分の用途に最適化したキーボードを得ること」を目的とした手段です。あくまでも手段の一つです。
目的を達成できるのであれば、どこかしらの企業が作ったキーボードを使えばよく、わざわざ「同人ハード」である自作キーボードに手を出す必要はありません。
もちろん、「かっこいいから使いたい」という人もたくさんいます。
なかには「自作キーボードを作ること」が目的の人もたくさんいます。
しかし、初めて自作キーボードの世界の門を叩く人のほとんどは、上記の目的を達成するための手段として自作キーボードを選択したのではないでしょうか。
自作キーボード初心者とは
さて、「自作キーボード初心者」とはどんな人が当てはまるのでしょうか。
議論はあるでしょうが、上記の目的を考えると、「買ってきた自作キーボードキットを使用可能な状態まで持っていける人」といったところでしょうか。
ここで「ん?」と思った人がいるでしょう。
「買ってきた自作キーボードキットを使用可能な状態まで持っていける人」?
そうです。自作キーボードとは、そこら辺の家電量販店で売っているような、「箱から出して PC に繋げば即使える 商品」ではないのです。
使うためにいろいろなことを自分でやって、問題が出てくれば解決していく必要がある、「同人ハード」なのです。
高かろうが、「個人が趣味で作った同人ハード」なのです。趣味で作ったものをみんなに共有しているだけに過ぎないのです。
「企業が商売として販売している商品」とは全く異なるのです。
ちなみに、自作キーボードの話題の中で、海外の企業が製造販売しているキーボードについて出てくることがありますが、それらは「カスタムキーボード」と呼ばれ区別されたりします。
おおむね「箱から出して PC に繋げば即使える 商品」に近いですが、使用する上では「同人ハード」の自作キーボードとほとんど変わらないものが多いかと思います。
とにかく、買ってきた自作キーボードキットを問題なく動かすところまで持っていけるなら、それは十分に初心者のレベルに達していると言えるでしょう。
初心者になるために
自作キーボードで要求される知識
まずは以下の文を読んでみましょう。
開発環境を構築し、 GitHub からソースコードを clone あるいは pull し、コマンドを打ち込んでコンパイル、書き込みを行う。
これは、自作キーボードを作る、使用する、カスタマイズする上で、ほぼ必ず行われることです。
この文章で言及されていることが理解できるでしょうか? 何をしているのか想像できるでしょうか?
だいたいのソフトウェアエンジニアであれば引っかかることなく理解できるでしょう。
それは、この文章に書かれていることが、ソフトウェアエンジニアにとって「義務教育で習うレベルのこと」、言わば「常識」となっているからです。
そして、自作キーボードにおいても概ね同様に「常識レベル」の知識なのです。
つまり、ソフトウェアエンジニアの「常識」程度の知識は持っておきたいということです。
場合によっては、電子回路の知識も要求されます。
英文を読む能力も必要になるでしょう。(優秀な翻訳ソフトが増えているので、あまり気にする必要はないかもしれませんが)
現在の自作キーボードの難易度
昔に比べれば低くなったのは事実です。
日本語の解説記事も増え、日本人によるコミュニティで日本語で助けを得ることもできるようになりました。
設定が簡単にできるようなウェブアプリが公開されたりもしています。
しかし、これらは言わば「大学卒業程度の内容を高校卒業程度の人にも理解できるようにした」くらいの難易度の低下だと思っています。
なにも知らない人が飛び込んでも、「義務教育も終えていない幼稚園児や小学生が、高校や大学の授業を聞いている」ような状態です。
※ わかりやすいように学校教育に例えているのであって、「初心者は義務教育も終えていないバカ」というような蔑む意図はありません
多少でもソフトウェア開発を経験したことがない人にとっては、依然としてハードルが高いと言わざるを得ません。
どうすればいいのか
勉強するしかありません。
学校に行け、とか、机に教科書とノートを開いてやれ、とかではありません。
上でも言ったように、ネットにはいろんな情報が無限に転がっています。
それらを読んで、必要となる知識を身に付けるしかありません。頑張って「自作キーボードの義務教育」を修了するしかありません。
コミュニティに入って教えてもらうのもいいでしょう。
「自作キーボードの義務教育」が修了できるように手伝ってくれるはずです。
ただし、これらはすべて「善意」で成り立っていることを忘れてはいけません。
人として礼儀をわきまえた振る舞いをしなければ見捨てられます。あまりに酷ければ干されるかもしれません。
なぜなら、本来、記事を書いた人や、コミュニティの人々にあなたを助ける義務なんてないのですから。
初心者を超えて
ここまで読んで、げんなりした人もいるかもしれません。
「自作キーボードを使うのをやめとこ」と思った人もいるかもしれません。
しかし、これを「初心者」と分類できる程度には、自作キーボードの世界は、深く広いのです。
できること、それに必要な知識の量が多いのです。
初心者レベルに達したら、自作キーボードの世界を自由に泳ぎ回ることができるでしょう。
今のキーボードをもっともっと使いやすくカスタマイズするのもいい。
気に入ったキーボードを買ってコレクションするのもいい。
スイッチにこだわるのもいい。
更に勉強して、キットを買うのではなく、自分で設計してもいい。
自分で設計したキーボードを頒布してもいい。
楽しみ方は自由です。
おわりに
先日、とあるブログが炎上しました。
個人的には、「けなすことを目的として、都合の良い脚色(あるいは改変)を行い、それに基づいた個人やコミュニティへの侮辱」といった、「悪意の塊のような内容」という感想を持ちました。
とても礼儀を欠いた行動で、品性を疑うというのが正直なところです。
今回の記事を書こうと思った理由でもあります。
最近は「初心者歓迎」の流れがより大きくなり、意識としてはとても素晴らしいことです。
しかし、現在の環境は「初心者になることすら高いハードルが存在する」と言わざるを得ないと思います。(ハードルを下げる試みが日々行われているが、それでもなおハードルが高い)
この記事を読んで、自作キーボードに触れることをためらった人もいるかもしれません。
「初心者歓迎」に逆行しているかもしれません。
しかし、何をするにも勉強は必要です。礼儀は必要です。
自作キーボードは、深みに嵌れば嵌るほど、たくさんの知識が必要とされます。
それを楽しみましょう。泥臭く勉強しましょう。
得た知識を最大限利用して、「俺だけの最強のキーボード」を作りましょう。
それを笑う人はどこにもいないはずです。