koktoh の雑記帳

気ままに書いていきます

BrownSugar Flex はどのように生まれたのか

はじめに

これは、BrownSugar Flex がどういう考えや経緯で設計されていったのかを書いた記事です
設計から販売に至るまで1年ほど経過しているため、思い出しつつ書いていきますので、あやふやな部分もあります

BrownSugar Flex とは

brownsugar.booth.pm

私が設計したキーボードです
Booth にて販売しています

特徴

  • 左右分割
  • モジュール化による、配列の組み替えが可能
  • 配列の組み替えによる、ファームウェアの変更不要

キーボード遍歴

一応、私のキーボード遍歴を書いておきます

  1. そこら辺にある USB キーボード
  2. Majestouch MINILA(Cherry MX 茶軸)
  3. Infinity ErgoDox(Cherry MX 茶軸)
  4. Corne Chocolate(Kailh Choc V1 茶軸, BLE Micro Pro)
  5. BrownSugar Flex(Kailh Choc V1 Red Pro, 茶軸, 白軸)
  6. MAJA(Zilent V2 62g, GPL 205g0 Lubed)

他にもいくつか持っています

  • Majestouch MINILA-R 浅葱(Cherry MX 赤軸)
  • Alix40(Silent Alpaca, GPL 205g0 Lubed, DES Films)

パソコンの入り口がノートPCで、そのせいなのか、パンタグラフ式の浅い打鍵感が好きでした
また、 Infinity ErgoDox を使い始めたことで Column Staggered こそが至高の配列であるとの思いもありました
なので、 Corne Chocolate はほぼマスターピースとも言えるキーボードでした

高級キーボードに手を出してしまった今となっては、少し物足りないですが……

どのように生まれたのか

ここから、どんな風に BrownSugar Flex が出来上がっていったのかを書いていきます

出発点

BrownSugar Flex を思いついた当時は、ある会社でプログラマをしていました
会社では Infinity ErgoDox 、自宅では Corne Chocolate を使用していました
言語は主に C# で、開発環境は Visual Studio でした

この構成で過ごしていると、ある不満点が出てきました

  • Infinity ErgoDox デカすぎ
  • Corne Choc 小さすぎ

特に大きかったのが

独立したファンクションキーが欲しい

という欲求です

というのも、 Visual Studio では、デバッグ実行、ステップ実行、定義への移動など、使用頻度の高いショートカットがファンクションキーに割り当てられています
Corne Chocolate を使用していると、ファンクションキーを使用するにはレイヤーを移動しなくてはいけません
しかし、それがどうしても面倒だったのです

そうして思いついたのが

Corne Chocolate の上にファンクションキーの行をつける

というアイデアでした

モジュール化という天啓

Corne Chocolate の上に1行追加するだけならとても簡単です
しかし、 Corne の 片手3行6列+親指3キー という構成、コンパクトさがとても大好きで、行の追加はそれを殺してしまう気がしました
さらに、 Corne Chocolate は Kailh Choc V1 をスイッチに採用することで、薄さも実現しています
このおかげで、たまに出かけてコーディングするときなどは、たびたびお世話になっていました

どうにかして、 Corne Chocolate のコンパクトさ、薄さを残したいと思ったのです

そこで思いついたのが モジュール化 でした

具体的には

Corne Chocolate の上に取り外し可能な1行を付ける

というものです

接続をどうするかは悩みましたが、ミドルマウントの USB Micro-B レセプタクル / プラグ を発見したことで方向が決定しました
これを使用したことで、高さを Corne Chocolate と同じにできました(ただし、組み立て難易度は飛躍的に上がりました)

イデアの暴走

なんとなく目途が立ってきました

しかし、これと時を同じくして Duplex Matrix というものを知りました
簡単に言うと、キーマトリクスに接続されるダイオードの方向を入れ替えることでキー数を倍増できる、みたいなものです

これを知った時、「もっとキー数を増やしたらどうなるだろう」という好奇心が首をもたげてきました
同時に、「モジュールをもっと増やせばいろいろな配列を作れるのではないか」という考えも浮かんできました

そして、それを実行に移すことにしました

仕様の決定

最終的に、モジュール数は7つ(両手で14)になりました

  • Base
    • Pro Micro が乗る、ベース部分
    • すべてのモジュールは、これに繋げる
  • Row0
    • 最上段の行になるモジュール
    • Base / Row1 の上に繋げる
  • Row1
    • 2行目になるモジュール
    • これの上に Row0 を繋げることができる
    • Row0 を繋げずに、これを最上段の行として使うことも可能
  • Row5
    • Base の下に繋げるモジュール
    • これの下に Row6A / B を繋げることができる
    • Row6A / B を繋げずに、最下行として使うことも可能
  • Row6A
    • 最下行となるモジュール
    • Base / Row5 の下に繋げる
    • 親指3キーと、掌で押せるスイッチがついている
    • Row6B とは排他
  • Row6B
    • 最下行となるモジュール
    • Base / Row5 の下に繋げる
    • 親指3キーがついている
    • Row6A とは排他
  • Pad
    • Base の外側に繋げるモジュール
    • テンキーなどとして使える

これらのモジュールは、自分の好きなように繋げることができ、左右でモジュールの配置が異なっても問題ありません

発注

仕様も決まり、設計も終え、実際に発注しました
この時は Fusion PCB で発注しました
各5枚でしたが、輸入消費税なども合わせて5万円ほどしました
ちょっとした改善点もありましたが、おおむね満足する出来でした

使用感

打鍵感は Corne Chocolate とおおむね変わりません
一度ファームウェアを書き込めば、モジュールの付け替えでその時欲しい配列のキーボードが手に入るのは、とても面白い体験だと思います
自分は、基本的には Base, Row0, Row6A, Pad(左のみ、テンキー)という構成で使っています
Row0 にはファンクションキーを割り当てています
コロナなどの影響で、カフェなどで作業するということはできませんが、持ち歩くなら Base, Row6A のみの構成にするでしょう

蛇足

Qiita への投稿、そして、販売へ

なんとなく Qiita へ投稿してみました

qiita.com

すると、思った以上の反響がありました
その反響に気をよくして、改善点を修正し、販売することにしました

価格は3万円と、自作キーボードキットとしてはとんでもなく高価です
しかし、基板が7つ(リバーシブルなので、7つを2セットで両手分になる)、ミドルマウントの USB Micro-B レセプタクル / プラグ が他の部品に比べてとんでもなく高価など、原価もびっくりするくらい高いです(5ケタ)

ちなみに、製品版では、マトリクスの配線を一部 USB まで引き出しており、そこに繋げることで自分で拡張できるようにもなっています
拡張キットの設計や販売は今のところ予定していません(全然売れてないので……)

おわりに

思い出しつつ書いたので読みにくかったかもしれません
BrownSugar Flex がどんな考えのもと作られたのか、どんな紆余曲折を経て今の形になったのか、少しでも理解していただければ幸いです

最後に、

BrownSugar Flex 絶賛発売中!!!!!買ってね!!!!!!

brownsugar.booth.pm